人材不足という負のループ
労働環境の悪化を招く
労働環境が悪化する原因は人材不足
介護の現場で大きな問題となっている「人材不足」ですが、介護労働安定センターが実施した「介護労働実態調査」によると、2015年度の介護職員の離職率は16.5%でしたが、2018年度では15.4%と減少傾向にあることが分かりました。これは事業所が早期離職防止や職員定着促進のためにさまざまな対策を講じ、少しでも働きやすい環境になるよう尽力しているからですが、介護人材の不足感は毎年増加しており、2018年度は67.2%と6割以上の人が人材不足を感じています。
人材不足が及ぼす影響
人材不足が実際にどのような影響を及ぼすのか詳しく見ていきましょう。まず考えられるのは介護職員の高齢化です。「介護職は労働環境が過酷なのに低賃金」というイメージが定着していることや少子化の影響もあり、現在福祉系の学部や入学希望者は減少傾向にあります。このままいくと、若者が増えないまま介護職に従事している人の年齢が重なるだけになるため、職員の高齢化は避けられないでしょう。
介護職は体力を必要とする重労働です。年齢が重なれば無理だと思う仕事が増えてくるでしょう。重労働を避けるために他の業種へ転職する人が増えてもおかしくありません。
そして、人材が不足している現場ではどうしても職員1人にかかる負担が大きくなってしまいます。その状況に耐え切れず他の職場や業種に転職する人も増えてくるでしょう。その結果、人材不足が労働環境の悪化を招き、さらなる人材不足を生む、という悪循環になってしまいます。しかも問題はそれだけではありません。職員が少なくなることで煩雑な業務に追われるようになるため、要介護者1人ひとりに目が行き届かなくなりサービスの質が悪化する可能性もあります。
なぜ人材が確保できないのか?
人材不足の介護施設では求人情報に募集を出すなど積極的に採用活動を行っています。しかし、介護職員として働くために必要な資格や経験がなかったり、意欲や素質を持った適切な人材が少なかったりなどでなかなか確保に至っていないのが現状です。また、採用してもギリギリの人数で運営しているため、しっかりと研修や指導をする時間が取れず育成ができないといった問題もあります。
事業拡大も難しい
人材が不足していると事業を拡大して収益を上げていこうと思っても事業所指定を受けることができません。実際に、都市部のある有料老人ホームで入居者が集まり追加のユニットをオープンしようにも職員が足りずオープンできない、といったケースもありました。
収益が上がらなければ、職員の給与や福利厚生面を充実させることが難しくなります。そうなると職員は条件の良い職場に移ってしまうため、採用人数よりも離職人数の方が上回りさらに収益が出にくい状態となります。