働き方改革の先駆者たち
どのような取り組みが改革を成功に導いたのか?
介護付き有料老人ホーム「鶴の苑」の成功事例
20%を超えていた離職率を10年かけて5%にまで引き下げた、介護付き有料老人ホーム「鶴の苑」の取り組みを見てみましょう。
鶴の苑では離職率を引き下げるためにさまざまな取り組みを行いましたが、その中でも最大の効果を発揮したのが「インカムの導入」です。
通常、要介護者の介護は職員が1人で行いますが、トイレや居室などで応援が必要になった場合、これまでは大きな声で誰かを呼ぶか、自ら走り回って手が空いている職員を探すしか方法がありませんでした。しかし、インカムを利用することで高齢者の尊厳を傷つけることなく、安全を確保したままで遠くにいる職員を呼ぶことができるようになったのです。
導入してすぐは付け慣れていなくて耳が痛くなったり、会話に集中できなかったりなどの問題もありましたが、徐々に便利さの方が上回り今ではさまざまな場面で活躍しているようです。また、どんな状況でも音声を通じてアドバイスを受けられるとあって勤務経験の浅い職員の精神的な支えにもなっています。
社旗福祉法人甲山福祉センター「甲寿園」の成功事例
女性が働きやすいように労働環境を整備している「甲寿園」の取り組みを見てみましょう。
甲寿園は1970年に開設された特別養護老人ホームです。現在は女性の活躍が当たり前になっていますが、その流れに先駆けて30年前から産前産後休暇やつわり休暇、子どもが病気になった際に休みが取れる制度などさまざまな取り組みを行っていました。
また、この施設では新人のためのフォローアップ制度にも力をいれています。技術研修や分野別研修、他の施設との合同実践研修など年間を通してさまざまな研修を行うことで経験不足を補っています。その結果、新卒3年以内の離職率は4.8%と低く抑えることができています。
社会福祉法人あいの土山福祉会「エーデル土山」の成功事例
社員の心身の健康に配慮したシフトを組んでいる「エーデル土山」の取り組みを見てみましょう。
エーデル土山では過酷な仕事内容や長時間労働といった介護業界の課題を解消するために、勤務体制やシフトの見直しに取り組みました。日勤勤務で3日以上連続とならないようなシフトを設定したり、勤務終了から次の勤務まで12時間以上間を空けたり、有給休暇を取得できるように業務を細分化し、専門職以外でもできる業務を職員以外の人にサポートしてもらうようにしたのです。業務が分業化したことで介護業務に多くの時間を割り当てられるようになり、よりきめ細かい介護ができるようになりました。
この取り組みは業務が効率化しただけでなく労働力の増加にも繋がり、障害者の雇用にも大きく貢献しています。